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掌編・短編小説

[4分で読める] 見覚えのない検索履歴 [短編小説]

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 2000年代前半、まだスマホなどという文明の利器が普及していなかった頃のことである。



「鬱 病院」

「死にたいとき」

「消えたい」

 キヨシは驚愕していた。彼の前にはパソコンのディスプレイがある。視線は、そのある一部分にくぎ付けになっていた。

 検索履歴。

 しかし、そこに並んでいるワードは見覚えのないものばかりであった。鬱? 死にたい? そんな言葉を検索欄に入れたことなど一度もない。

 自分以外の誰かが、俺のパソコンを勝手に使用したのだ……!

 しかもよりによって、なんとも不健康な単語が並んでいる。これは、場合によっては、一刻の事態を争うのではないか? 

 自分のパソコンを親に買ってもらってまだ一年くらいの中学生・キヨシは、この事態を重く受け止めた。塾から帰って家族みんなで晩御飯を食べ終わった後のことである。



 落ち着いて考えよう。まっさきに疑うべき容疑者(家族)は次の通り。

 父、母、兄、姉、祖母の5人。

 消去法で攻めよう。選択式の問題の時はこれが正攻法だって、学校のエイちゃん先生も言ってた。

 まず、祖母は除外していいだろう。全くもって健康そのものの祖母だが、パソコンを扱えるとは到底思えない。パソコンを使って何かを検索しようなど、思いもよらないだろう。

 次に、兄も除外対象だ。高校生の兄は、キヨシと同様、中学生時代にパソコンが買い与えられている。わざわざ弟のパソコンを使う理由はない。現にいま、兄は隣の部屋でカタカタやっている。

 さて、残るは三人。父、母、姉である。どうやって消去していこうか……。

 数秒悩んだキヨシの頭に閃きが訪れた。

 アリバイだ……!

 検索履歴をもう一度チェックする。すると、そこには検索ワードの隣にその検索を行った時刻が表示されている。

「鬱 病院」 18:32

「死にたいとき」 18:29

「消えたい」 18:27

 この時刻、アリバイのある人物はキヨシを除けばただ一人である。

 父だ。

 キヨシが塾から帰宅したのが19:00頃。父はその約10分後に帰ってきた。よって、父はこれらの検索ができたはずがない。父も除外できる。

 では、推理を続けよう。しかし、ここで再び、キヨシは悩んだ。ここからどう詰めていけばよいのか見当がつかない。

 検索ワードから考えてみようか。なにか最近すごく思い悩んでいる様子はなかったか? ここ数日の家族の振る舞いを思い浮かべてみる。……いいや、母も姉もいたって普通、通常運行しているようにしか、キヨシの目には映らなかった。とても自殺を考えているようには思えない。

 何か、他に手がかりはないだろうか……。

 そのとき、居間の方で何かの曲が流れているのが聞こえた。

 着メロ! 

 そうだった! 姉は携帯電話を持っているのだ。最近の携帯電話は、電話だけでなくメールをしたり、インターネットにつなげて検索することもできると聞く。それならば、姉がキヨシのパソコンをわざわざ使って検索する必要性がなくなる。……うん、姉は除外できる!

 となると、残るは母である。いったい何をそんなに悩んでいるのか……?

 しばらく考えたのち、直接尋ねるほかないと思い至った。そこで、キヨシは部屋を抜け出し、居間へと向かった。

「母さん、最近俺のパソコン触らなかった?」

「勝手にあんたのパソコンに触るはずないでしょ。それより勉強してるの?」

 流れが悪くなりそうだったので、即座に逃げ帰ってきた。

 にしても、これはどういうことだろう。推論を重ねた結果、容疑者が全員除外されてしまった。

 となると、幽霊? 泥棒? それとも俺自身が多重人格者だったり?

 いやいや。そんなことは……。と、改めて画面を見て気がついた。知らない検索ワードはこれだけではなかったのだ。



 「アダルトサイト 息子 どうする」 18:20



 うわあああああああああああああ! 母さあああああああああああん!

 母が嘘をついていたのだ! 

 いや、そんなことは問題ではない。

 俺の検索履歴が見られてる!

 いや、それも真の問題ではない。

 本当に問題なのは、「アダルトサイト 息子 どうする」→「消えたい」→「死にたいとき」→「鬱 病院」というこの検索順序なのだ!

 どうしようどうしよう、俺がエッチなサイトを見ていたせいで、母は絶望し鬱になってしまったのか。俺のせいで死ぬほど悩んでしまっているのか!? ああ、だめだ、考えがまとまらない。どうすればいい? 素直に白状すればいいのか? 病院に行くのを勧めればいいのか? わからない、わからない……。



 結局、しばらくしてから母に再度問うと、あっさりとパソコンの使用を認めた。なんでも母の友人の精神状態が好ましくないらしく、どうするべきかG○○gle先生に尋ねてみたということだった。

 なあんだ。キヨシは素直にほっとしていた。俺がサイト見たから鬱になっていたわけではなかったのか。

 しかし、

「そういう年頃かもしれないけど、ほどほどにしときなさいよ」

 と母に言われ、キヨシはあえなく撃沈した。

 ……よし、鬱だ氏のう。
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