[長編] 魔法少女は誰かを愛しちゃダメなんですか

第18話 切なる願い

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「どうする?家の前をウロウロしてる」

 窓の外を見つめながら、ミミが訊く。

「私たちに気づかれたことに気づいていないなら、こちらから仕掛ける」

 そう言って、メイは部屋を飛び出していった。

 ミミも慌ててそれを追った。アイ、シズも続く。

「ミミ、裏口は?」

「あっち」

 階段を降りて、玄関とは反対の方向へ向かおうとしたそのとき。



 ピンポーン。

 チャイムが鳴った。メイが立ち止まる。

「今の、黒装束?」

「ドアの覗き穴から見てみる」

 ミミは、引き返して玄関に向かっていった。靴も履かずにドアスコープから外の様子を伺う。

「なんか、普通にドアの前に立ってるけど……」

 振り返り、ミミが伝える。

「開けてみようか?」

 メイが一瞬考え、答える。

「お願い。私が後ろで構えてるから」

 いつの間にかメイの手には杖が握られていた。後ろにはシズとアイもいる。

「じゃ、せーのでいくよ」

 ごくんと唾を飲み込む。

「せーの!」

 ガン、とドアが何かにぶつかった。咄嗟に身構えたものの、何も出てこない。

 そっと開いたドアの向こう側を覗き込むと、そこには、うずくまっている黒装束の姿があった。



「……」

「……」

 メイも様子を確認して、黙り込んでいる。

「え、えっと大丈夫?ぶつかった?」

 ミミが黒装束に優しく問いかけた。黒装束がゆっくりこちらを向いた。ミミははっと驚いた。

「い、痛いです……」

 そこには、涙目の、白い髪の少女がいた。



 こちらに危害を加える様子はなさそうだったので、とりあえずミミの部屋に招き入れた。

 黒装束の少女は、フードをとって部屋の中を見回している。

 部屋には、黒装束の少女と、メイ達4人がいる。ちょっと狭く感じる。

 ミミが質問を開始した。

「そうだね、まずはお名前から聞こうか」

 こくんと頷き、少女は答え始めた。

「私は、マリといいます。あの、中学2年です」

「マリちゃんは、どうしてここに来たの?」

「はい」

 マリは居住まいを正した。

「メイさんにお願いがあって来ました」

 メイが反応する。

「……西で魔物と戦ってくれ、と?」

「そうです」



「マリは、カブラギ通り路地裏のあの場にいたの?」

 メイが質問する。

「はい、私もいました。なので、メイさんが一度断られたことは知っています」

「だったら」

 メイが言いかけるのを阻止して、マリは続けた。

「それでも、お願いしたいんです。私、弱くて、それでも西のみんなの役に立ちたくて、だからメイさんを西に呼んでこようって思ったんです」

「ここに来たのは、マリの独断?」

「はい」

「……」

 メイが悩むそぶりを見せる。



 もし東のこの町が安泰であれば、メイはきっとマリの頼みを聞いたことだろう。ミミにはわかる。メイはあれで、結構優しい。わざわざ西からやってきた少女の願いを無下に却下はしないはずだ。

 しかし、メイがここを離れれば、この町は危険にさらされることになる。ミミ1人では、この町を守りきる自信がない。それほど強い魔物が出現しないとはいえ、ミミの魔力で立ち向える相手だけが出てくるとは限らないからだ。

 メイは、悩んでいる。自分がここを離れても大丈夫かどうか。離れるとすれば、どのくらいの期間までならOKなのか。

 ミミは、己の力不足を悔やんだ。私がもっと強ければ、メイに頼ることなくこの町を守れるのに……!

 私の魔力が足りないのは、なぜ?それは、私が、メイを、



「西の状況はかなり切迫しています」

 マリの言葉にシズとアイが動揺したようだ。

「以前には見られなかった強い魔物が出現するようになり、またその頻度も増加しています。魔法があまり効かない魔物も出てきて、これ以上ルートが拡大すれば、さらに状況は悪化します」

「師匠の言っていた通りだ……」

 アイが誰にともなくつぶやく。

「メイさんのお力が必要なんです!どうか、お願いします!」

「……」

 メイは下を向いている。



「じゃあ、こうすればどうかな、メイ」

 ミミが話し始めた。

「私1人だと、確かにこの町を守るのは厳しいかもしれない。だから、隣の町の魔法少女にもこの町の警護をお願いするっていうのは」

「隣の町の……?」

「うん、魔法少女の知り合いがいてね、その娘たちに頼めば、きっと何とかしてくれると思う」

「……」

 メイはまだ考え中だ。

「明日、私が会いに行ってみるよ。それでこの町を任せてもいいか訊いてみる。それから決断しても、いいんじゃないかな」

 メイとマリに問いかける。

「私、お待ちします」

 マリが答える。そして、

「……うん、わかった。私も明日、ミミと一緒に行くよ」

 そう、メイも答えた。

「ありがとうございます!」

 マリがメイにお礼を言った。

「まだ、西に行くと決めたわけじゃないけど」

 メイがマリにそう応えたが、もう悩んでいる様子はなかった。



 明日の予定の話し合いが終了して、メイは家に帰っていった。

 シズ、アイは予定を1日早めて、今日までミミの家に泊まることになった。明日、土曜日には西に帰るという。

「マリは、どうする?」

「メイさんのお返事をお待ちしたいと思います」

「今日、どこか泊まる予定の場所とかあるの?ホテルとか」

「あ」

 一瞬、マリが固まる。

「えへへ、何も考えずに来ちゃいました」

「じゃあ、マリもうちに泊まっていきなよ」

「え、いいんですか!」

「ちょっと狭いかもしれないけどね」

「いえいえそんな。ありがとうございます!」



「とても賑やかになったわね」

 ミミの母親は、そう言ってマリの宿泊を承諾した。特に理由もいらなかった。

 タケルがなんだかいつもよりそわそわしていたが、ミミは気にしなかった。

 結局、その日の夜は、アイとマリが同じミミのベッドで、シズが床のお布団、ミミは居間のソファーで寝た。
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