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[3分で読める] 水からの便り ~迷信の功罪~ [掌編小説]

 ←第16話 師匠の話③ 東のこと →[2分で読める] 人の顔と名前が覚えられない僕は、異世界に来て詰みました [掌編小説]
「……H2O。水素と酸素、これが水を作っているのです。みんなには、ちょっと早いかな」

「水素」、「酸素」と黒板に書きながら、先生の説明は続く。

 僕知ってるよー。

 声が後ろの方から声が上がった。

「まあ、物知りね」



「……水に良い言葉をかけると、水中の水素原子が活性化します。わざわざ高い市販の水素水を買わなくても、こうやって体にいい水を作ることができるのです」

 教壇に置いてあるいくつかのボトルには、それぞれ「愛」、「ありがとう」、「平和」、「平等」、「指導者様」、「祖国」などと書かれたレッテルが貼ってある。

「一方、水に悪い言葉をかけると、水中の酸素原子が活性化します。この活性酸素は老化や病気の原因となるものです。みんなにとっては毒ですね」

 そう言うと、先生は教壇の下から、これまた何本かのボトルを取り出した。そのボトルには、「憎悪」、「死ね」、「戦争」、「格差」、「レジスタンス」、「××(とある国の名前)」といった言葉が貼られている。

「さあ、みんな、どちらの水が飲みたいですか? こっちの良い言葉が貼ってある水の人は手を挙げてください。うんうん。そうですね。では、手を下ろして。こちらの悪い言葉が貼ってある水が飲みたい人は? うん。誰もいませんね」

 ぼくも教室の様子を見渡してみた。良い言葉のときは、全員の手が挙がっていた。

「じゃあ、みんなで良い言葉をかけた水を飲んで健康になりましょう」

 そう言うと、先生はやはり教壇の下から取り出した紙コップに、ボトルから水を注ぎ始めた。



「どうですか。おいしいですか?」

 教室中を歩き回りながら、一人一人の生徒に対し笑顔を見せている。

「ここで、ちょっと考えてみよっか」

 一周し終えた先生は、教壇に戻ると、パンと手を打ち、問いかけた。

「みんなは、なんで悪い言葉を他の人に使っちゃダメなのか、考えたことある?」

 ぼくは何もアイディアが無かったので、横や後ろを向いた。ぼく以外の子も首をかしげている。

「お父さまにそう習いました」

「まえの先生が言ってました」

「××人みたいになっちゃうから」

 ポツポツと回答が上がる。

「うんうん。どれも合ってますよ。でも、本当の理由は、この水にあるんです」

 僅かに中身が残ったボトルを持ち上げた。

「みんなの体は、何でできているか知っていますか? 実は、人間の体の70パーセントは水なんですよ!」

 ええー、と驚きの声があちこちから上がった。

「びっくりでしょ。でも、これがヒントなんです。大部分が水でできている人間に悪い言葉をかけると、どうなると思いますか?」

 先生の笑顔は崩れない。

「びょーきになる」

「体によくない」

「どくだから、死んじゃうかも」

 ぼくも、みんなの意見に賛同するように、うんうん、と頷いた。

「みんなはお利口さんですね。そうです。だから、人には悪い言葉を言っちゃダメなんですよ」

 ぼくは、また一つ賢くなった。



 それから、ぼくらは悪い言葉を使わなくなった。



 悪い言葉かどうかわからないものは、先生に聞いた。

「暴力」、「○○(とある民族の蔑称)」、「キチガイ」、「改革」、「権力」……。

 これらは悪い言葉なんだって。

 教科書にも載っている言葉もあるけど、ぼくらは人に向かって使っちゃいけないんだ。



 悪い言葉を使わない、これはぼくらのひとつの誇りにもなっていった。



 …………
 ……


 20年後、ぼくは一人の研究者に出会った。

「悪い言葉で水が劣化するって? ハハッ」

 何がおかしいのだ。

「良い言葉で健康的な水に、か。あほらし」

「ちょっと待ってください。なんでそんなこと言うんですか。ぼくは、いいえ、ぼくらはその水のおかげでこうして健康的な生活が送れてるんですよ」

 その科学者は、真っ向から先生の教えを否定した。



 その主張は、30年以上も前に科学的な反証がなされている、そう言ったのだ。



 ぼくは、目の前が真っ暗になる気分を味わった。

「じゃあ、あなたは、人に対して悪い言葉を使ってもいいって言うんですか? ぼくは、嫌ですよ、そんな世界!」

 ぼくは去り際に言い放った。

「この○○が!」



 Q. 「じゃあ、あなたは、人に対して悪い言葉を使ってもいいって言うんですか?」と言わしめた「ぼく」の考え、はたしてどこがおかしかったのでしょうか。
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