[長編] 魔法少女は誰かを愛しちゃダメなんですか

第15話 師匠の話② 黒装束のこと、魔具のこと

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「次の質問はメイからしてもらいます」

「そうかい。では、メイ」

「はい」

 一度頭を下げてから、メイが話し始めた。

「先ほどのミミの話に出てきた黒装束のことです。黒装束と初めて会ったとき、私はクッキーに魔力探知をお願いしていました。しかし、黒装束の魔力は、彼ら、または、彼女らが魔力発動をするまで、クッキーによって感知することはできませんでした。これがお聞きしたいことの一つ目です。なぜ、黒装束たちは魔力を隠すことができたのでしょうか。彼らの黒装束にその秘密があるのではないかと考えています」

「ふむ」

 師匠は目をつぶった。

「なるほどね。メイが考えていることは正しいと思うよ。魔力を隠す特性を持っている布があってね。これは魔具の一種なんだけど、これでその黒装束を作ったとすると、魔力に関してステルス機能を発揮することになるのかもしれない」

「あの、魔具って何ですか」

 アイが師匠に訊く。師匠が目を開いた。

「ああ、魔具っていうのは、昔からある、魔法にまつわる道具のことなんだ。誰がどうやって作ったのかは知らないけれど、色々と便利なものが今の時代にも残っている。ほら、メイ、杖を」

「はい」

 師匠が促すと、一瞬のうちに、メイは手のひらの上に杖を登場させた。

「メイの持っているこの杖も魔具の一種さ。メイの杖は、魔力発動をしていない状態からでも、ノータイムで魔法を発動させることができるという、とても優れた機能を持っている。他にも魔法の威力強化や、杖にモーションを覚えさせることで自動的に魔法を発動できるようにする、といった機能もある。たとえば、メイがこうやって杖で大きく円を描くのを見たことがないかな。あれは、散消の動作だ。あれだけでエネルギーや偽物質を打ち消せるんだ。なかなかすごいだろう。この杖、実は僕がメイにあげたものなんだけれどね」

「へえ。実は前から気になっていたんですけど。魔具っていうんですね」

 アイが感心したように頷いている。

「うん。魔具は結構レアなものだからね、そうそうお目にかかれるもんじゃないよ」

「じっくり見ておきます!」



「では、次にお訊ねしたいことなんですが」

 メイが話を元に戻す。

「その黒装束のステルス機能を無効化することは可能でしょうか」

「それは、つまり、ステルス状態の敵でも感知できるようにするにはどうすればいいか、っていう質問だね」

「そうです」

「あるよ」

「え!?どんな方法なんですか」

 ミミが驚いている。師匠は、まあ慌てなさんなとでも言うようにカップに口をつけた。

「君たちは、いや、君たちだけじゃない、ほとんどの魔法少女は、一度魔法を覚えると、それだけに頼りきってしまうという難点があるようだね。敵の感知だろう?簡単で古典的な方法がある。それは、鳴子だよ」

「なるこ?」

「まあ、事前に準備が必要だし、どこでも使えるってわけじゃないけど。もし君たちのテリトリに敵が侵入したときにそれを感知したいってことなら、これで十分だと思うよ」

 師匠は、おそらく偽物質生成だろう、何やら木の板でできたおもちゃのようなものをその手に生成した。手を振ると、カタカタ音が鳴る。

「こんな具合に触れたり揺らしたりすると音の鳴るものを作る。たとえば通り道にワイヤーかなんかを仕掛けておいて、これをそこに垂らしておくと、敵さんがそのワイヤーに足を引っ掛けた途端、音が鳴り響いて敵の侵入を知ることができるって寸法さ。もっとも、これ自体はかなりアナログなものだから、実際にはもっと洗練された方法を使うのがいいと思うけれどね」

「なるほどー。でも、それだと黒装束の人だけを感知するってわけにはいきませんよね。それに、どこかでいきなり出くわした場合なんかも、対処できないし……」

 ミミのイチャモンに、師匠は何やら顔をしかめている。あれ、ちょっと不機嫌になっちゃった?

「確かに、そういう欠点はある。すぐに思いついたのはこの鳴子だけど、他にも何か有効な手があるかもね」

 今一度師匠を見ると、いつもの師匠に戻っていた。あんまり余計なことは言うまいとミミは誓った。



「鳴子は参考になりました。ありがとうございます」

 メイが頭を下げてお礼を言う。

「なんのなんの」

「続いて、これも黒装束についてです。私たちが出くわした黒装束は5人いました。魔力発動の様子から、それぞれの魔力の程度を測ったのですが、5人のうち2人は、私と同程度かそれ以上の魔力持ちでした」

「なんだって!?」

 師匠が目を見開いた。組んでいた足を戻し、メイのほうに体を向けた。

「それは本当かい?」

「視認した限りでは、そうでした」

「いや、これは驚いたな。メイを凌ぐ魔力持ちが???の他にもいるとは……」
 しばし考え事をした様子の師匠は、それから言葉を紡ぎ始めた。

「ああ、そうか……。それは、???による魔力伝達の結果かもしれない。うん、きっとそうだ」

 師匠は1人で納得している。

「でも、魔力伝達ってすごく効率悪いんじゃなかったでしたっけ」

 ミミが疑問を口にする。

「普通は、ね。おそらく、???の元には魔具がある。それは魔力伝達の効率を上げるためのものだ。いいかい、ミミが言ったように、魔法使いから魔法使いへと魔力を伝達する際には、膨大な魔力量が失われる。一般に、効率が悪いんだ。だから、普通は、魔力を他の魔法使いに渡すことによる魔力の増強を考えたりはしない。だが、その魔具があれば、ほとんど損失なしで魔力の受け渡しができるようになる。???はそれを利用して、黒装束たちに魔力を渡したんだ」

「ここにも魔具が出てくるんですね」

「ああ、そう考えたほうが自然なんだ。メイ本人の前で言うのもなんだけど……」

「続けてください」

 メイが言う。

「じゃあ、言うよ。メイは、魔法少女としては最高の素質を持っている。生まれつきの魔力量もそうだけど、この世界の魔法少女の大原則に則っても、ね」

「『魔法少女の魔力は、そのもののもつ愛や憎しみの大きさに反比例する』ですね」

 ミミが補足する。

「そうだ。どういう経緯か僕には知る由もないが、メイにはそれらの感情がほとんど抜けているようなんだ。これは普通じゃない。そして、この普通じゃない魔法少女がそうそういるとは思えない。だから、僕は黒装束に、メイに匹敵、いや、メイを凌ぐほどの使い手がいることに驚き、そして魔具の存在を疑ったんだ」

 師匠はここまで言い切ると、ふぅっとため息をついた。そして、全員にやっと聞こえる程度の小さな声で続けた。

「でも、本当に魔力伝達だけなんだろうか……」
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