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倉庫(掌編・短編小説)

[3分で読める] 殺人症候群 [掌編小説]

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 悲鳴が聞こえる。

「お願い、私たちを殺さないで! まだまだやりたいことがあるの。守りたい人がいるの。叶えたい夢があるの!」



 残念ですが、こうでもしないと、この小説はインパクト不足なのです。

 ヤマもオチもない至極退屈な小説になってしまいます。

 だから、申し訳ないと思っていますが、あなたには犠牲になってもらいます。

 ほら、読者は血が好きなのですよ。

 あなたが内臓をブチまけて、這いずり回る様子を読みたがっているのです。

 あら、苦しそうね。

 でも、もうちょっと辛抱してね。

 すぐに死んでしまっては、興醒めでしょうから。

 もっと読者を楽しませてくれませんか。

 そう、そうです。

 あなたのその手、何かを伝えようと伸ばしたその手、いいですよ。

 その目の輝きも素敵です。

 何を訴えかけているのでしょうね……。



 あらら。

 死んじゃった。

 殺人鬼も血に塗れてる。

 こいつも殺しちゃおっか。

 読者はこういうのがお好きなんでしょ。

 彼は彼女を無残に痛めつけたその凶器で自ら喉を掻き切った。

 鮮血が勢いよく飛び散る。

 ふふふ。

 美しい。



 ……なんですか、あなたは。

 そう……。私が殺めた登場人物の1人なのですか。

「私は、みんなの無念を背負ってやってきました」

 私を……、殺すつもりですか。

 私は、読者のために流血を描く必要があったのです。

 読者が、それを望んでいるから。

 だから、期待に応えた。

 ただそれだけですよ。

「では、お聞きしますが。あなたの安易なスプラッタ表現で本当に読者は喜んでいるのですか? 私たちを犠牲にしてまで、やる価値はあったのですか?」



「いいですか。物語の都合も考えず、登場人物の個性も奪い、インパクトのみを追求するためにスプラッタ表現を小説内に組み込むのは、はっきり言って悪手です」



 作家は、首を捻った。なぜ、インパクトのために誰かを殺してはいけないのだ。

 手っ取り早く読者に衝撃を与えるには、誰かを殺すのが一番ではないか。

 うまい話の展開が思いつかなくたって、とりあえず誰かを殺しておけば、読者の印象には残る。「赤」の表現が脳裏にこびりつくだろう。

 それの何がいけない?

 残酷な死を表現して何が悪い?

 殺人鬼を出すと、倫理的な問題でも発生するというのか?



「私は、命は大事だとか、そんな陳腐なことを言いにきたのではありません。はっきり申し上げます」



「あなたの発想は幼稚です」



「私は、そんな幼稚な発想に付き合わされて殺されたことを無念に思い、こうしてあなたに会いに来たのです。あなたの小説に喜ぶのは、せいぜい小学生くらいのものですよ」



 作家は、絶句した。

 私が、幼稚……?



 その日から、作家は三日三晩考えた。



 彼女は、彼女がこれまでに生み出した作品を読み返した。どれもこれも血塗れだ。うん、確かにインパクトは強い。しかし……。



 しかし、何か足りない。

 いや、はっきり言おう。決して、面白くなんか、ない。



 彼女は、目を瞑った。

 そして、今読んだ物語たちのストーリーや登場人物を思い浮かべた。



 間違いない。これらは、駄作だ。

 あの登場人物が言った通り、安易だった。

 素人が軽々しく殺人や人の死を扱えるわけなかったのだ。



 彼女は、ネットにアップロードしたそれらの小説を全て削除した。

 とても人に見せることができる代物ではないという、彼女自身の判断だった。



 それから彼女は、新しい物語の執筆を始めた。
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