スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←第11話 大通りの戦い② →第12話 魔物討伐
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


  • 【第11話 大通りの戦い②】へ
  • 【第12話 魔物討伐】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

倉庫(掌編・短編小説)

[2分で読める] 私が、張良……!? [掌編小説]

 ←第11話 大通りの戦い② →第12話 魔物討伐
「さあ、時は来た、張良よ。今こそ、項羽を追い詰める策を」

 小太りのおっさんが言う。

 私はそのおっさんの前で傅いていた。


 …………
 ……


 私は、どうやら、タイムスリップとやらを経験したらしい。

 現代から流れ流れてたどり着いたは楚漢戦争時代。

 どういうわけか知らないが、項羽を討ち、後に漢を興すことになる劉邦(目の前のおっさんがそうらしい)の参謀、張良こそが、私だった。

 なんてこった……!


 …………
 ……


「ほれ、張良、早く策を言わぬか」

 現在は、追い詰めた項羽軍を如何にして損害なく壊滅させるか、検討の真っ最中であった。劉邦は自分では案を出さず、私にばかり意見を求めてくる。

「し、」

 口から言葉が自然と出てきた。何だこの感覚は。誰かに操られているような……。

「し?」

「し、七面鳥」

 劉邦はぽかーんとした顔になった。



 咳払いをし、頭をブンブン振り回した後、真面目な顔つきに戻ると、改めて私に問いかけた。

「して、張良よ。お主の策は」

「し、しめ」

 やはりだ。口が勝手に動く。何なんだこれは……!

「しめ?」

「使命を果たせず、申し訳ありません!」

 クルッと回れ右をして、ダッシュで逃げる。

 しかし、あっけなく部屋の外で取り押さえられた。



 再び劉邦の前に座らされる。

 劉邦は、何だかそわそわしている。

「んん。さあ、張良よ、もう思いついておるのだろう。勿体ぶらずにはよう言うのだ」

 またも咳払いをし、

「し、し、しめんそ……?」

 満面の笑みで劉邦は私に向かって言う。

 ここまで言えばわかるだろう、と言わんばかりだ。

「しめんそ……」

 私の口も、つられて動き出す。

「うん?」

 乗り出してくる。おっさん、近いって。

「し、しめん、薩婆訶(そわか)」

 劉邦がズッコケた。

 さすがにこれは苦しかったか。



 もう、限界だった。

 私の口は、私のいうことを聞かなくなってきている。

 もうこれまでだ……!

「張良よ。さあ、言ってしまえ。しめんそ……?」

 だから、顔を近づけてくるなよ。



「し、し、しめんそか!」



 遂に、言ってしまった……。

 劉邦はうんうん頷いている。

「さすが、張良だ。これこそ名案中の名案。奇策中の奇策。項羽の軍勢を取り囲み、楚の歌を歌うだって? 誰にも思いつなかったぞ。何ということだ。わっはっはっは」

 高笑いが部屋中に響き渡った。


 …………
 ……


 大合唱の中、私は一人涙を流しながら歌っていた。

 歴史には抗えないのだ。

 私がいくら抵抗しようとも、こうなる運命だったのだ。

 ああ、項羽よ……!



 私は、項羽の大ファンだった。

 せめて、項羽に最後の抵抗をさせてあげたかった。

 それが、私の策で項羽にとどめを刺すことになろうとは……!

 なんという酷いことをしてしまったのだ……!



 私の涙交じりの詩は、劉邦軍の大音量の歌声に掻き消されていった。



 力は山を抜き 気は世を蓋う

 時利あらず 騅逝かず

 騅逝かざるを 奈何すべき

 虞や虞や 汝を奈何せん
関連記事
スポンサーサイト


  • 【第11話 大通りの戦い②】へ
  • 【第12話 魔物討伐】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【第11話 大通りの戦い②】へ
  • 【第12話 魔物討伐】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。