倉庫(掌編・短編小説)

[1分で読める] 伝えるということ [掌編小説]

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 大きな通りの歩道の上に、一人のパフォーマーがいた。
 彼の芸に、人々は足を止め、見入っていた。
 やがて芸は終了し、彼はお客さんたちに一礼した。
 観客は拍手をした。
 しかし彼はそれに反応することはなかった。
 いそいそと片付けを始め、去って行ったのだった。
 彼の態度を見た人々は彼を貶し始めた。

 彼は盲ろう者だった。
 人々の拍手や歓声は聞こえず、その喜ぶ姿も彼には見えなかった。
 彼はいつも自分の芸に疑問を抱いていた。
 道行く人たちを驚かせるだけの技量があるのか、常に悩んでいた。

 今日もまた、芸は繰り広げられる。
 多くの人がそれを見ようと立ち止まった。
 やがて芸は終了し、彼はお客さんたちに一礼した。
 一人の少年が客の輪の中から飛び出てきた。
 少年には気づいていない彼の手を取り、いくらかの硬貨とチョコレートを握らせたのだ。

 これこそ彼が受け取った<初めての>評価だった。

 彼は手にしたものをもう片方の手でそっと撫でた。
 それから微笑んで、小さな審査員の頭の上に手を置いた。
「あいがとう」
 ぎこちない発音だったが、少年の心には十分に届いた。

 彼は今も大道芸を続けている。

 …………
 ……

 もしあなたが観客だったら、どうしましたか?
 適切なやり方で彼に伝えましたか?
 それとも彼には伝わらない方法で称賛し、去って行きましたか?
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