[長編] 魔法少女は誰かを愛しちゃダメなんですか

第3話 ラブソングは響かない

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 その日、クッキーによる怪しい魔力の感知はなかった。何事もなく、翌朝を迎えた。

「あのー」

 今日も今日とて、朝になってもミミは熟睡中。

「ミミさーん、起きてくださーい」

 シズが揺すって起こそうとするも、やっぱり起きない。うーん、どうしようかしらと迷っていると、今日もやはりタケルがやってきた。フライパンとお玉を持ってきている。

「シズさん、ちょっと耳塞いでてください」

 それからは、いつものやり取りが続いた。



 午前8時前、メイ、ミミ、シズは駅に到着した。

「まだちょっと時間あるね、どうする?」

 ミミがメイを見ながら問う。

「どうって、待つけど」

 メイはそっけなく応える。

「いや、それはそうなんだけどね」

 メイの受け応えには、ちょくちょくひっかかるところがある。

「あ、じゃあ、私、本屋さんに寄っていってもいいですか?」

 シズが指をさす。ここの駅には小さい本屋があるのだ。

「あ、いいね、じゃあ、私もそうしよっかな」

 ミミもそうする気になった。

「私は、そこのベンチで待ってるから」

 メイは言うや否や、スタスタと歩いて行った。

 ミミがメイの行く先をぼんやりと眺めているのを、シズは見ていた。



 シズは本屋に入ると早速、海外のファンタジー小説のコーナーへ向かう。ミミもそれについて行った。他人の本選びを眺めるのは結構楽しいものである。

 シズはいくつか本を手にとって表紙やあらすじを見ては、元の棚に戻していった。

「シズは本好きなの?」

「はい。私、学校ではいつも本を読んでいます」

「へえ。やっぱりファンタジー小説?」

「そうですね。それも多いですが、基本的にどんなジャンルでも読みますよ」

「私も少し本を読むんだけど、ファンタジー小説はあまり知らないんだよね。何かオススメの本とかある?」

 そうですねー、と本の詰まった棚を見ながらシズが考える。

「これはどうでしょう」

 一冊の本を取り出して、ミミに渡した。

「『サークル・オブ・マジック』?」

 渡されたのはお城の絵が表紙のハードカバーだった。

「はい。小学生のときに読んだんですけど、すごく面白かったです。展開が二転三転して、スリル感を味わえます」

「そうなんだ、面白そう!あとで買ってみようかな。今はちょっとお金ないから」

「ぜひぜひ。楽しんでいただけると思いますよ」

 オススメ本の紹介も、また楽しいものである。



 そうこうしているうちに出発時刻になった。

 3人は電車に乗り込み、向かい合っている席を見つけて、そこに座った。

 時刻がきた。電車がゆっくりと動き始める。



 メイはさきほどから音楽を聞いていた。耳にイヤホンを差し込んで、ぼーっと窓の外の移りゆく風景を眺めている。

 ミミとシズは、出発直前に買ったお菓子を交換しながら食べていた。

 西の駅に着くまで三時間ほど。結構長い。

 向こうのことは向こうに着いてから考えることにしよう。ミミはそう考えていた。



 西までの道のりも半分くらいは過ぎたころだろうか。

 メイがイヤホンをはずし、鞄のなかに収めた。眠たくなったのか、目をつぶってしまう。

 ミミはその瞬間を逃さなかった。

「ねえ、メイ、何を聴いてたの?」

 一度つぶった目を開けてミミを見た後、また目をつぶって応える。

「ピアノ」

「何の曲?」

「色々。『月の光』とか」

 ほうほう、『月の光』とな。どんな曲か分からないけど、なんとなくメイにあっている気がする。

「メイはJ-POPとか聞かないの?」

「あまり」

「なんで?」

 会話を途切れさすまいと、ミミは質問を続ける。

「……響かないから」

「あ、そうなんだ」

 会話終了である。



 午前11時過ぎ。

 ミミもウトウトとし始めたところで、ようやく目的の駅に到着した。

 電車から降り、うん、と伸びをする。

「えーと、これからシズの友達のアイちゃんに会う予定だっけ」

「はい。この駅で待っていると思うんですけど……。あ、いました」

 シズが手を挙げると、それに気づいた少女が手を振り返した。赤みがかったポニーテールの髪型をしている。結構見分けやすそうだ。

「よっ」

 少女が駆け足でやってきてシズに声をかけた。

「こちらが私と同じ学校に通っているアイです」

 シズがメイとミミに紹介する。

「アイです。よろしくお願いしまーす」

「で、こちらが東で出会った高校生の先輩たち」

「ミミです。アイちゃん、でいいのかな。よろしく」

「メイです」

 ミミとメイは、アイから差し出された手を握った。

「じゃ、早速だけど……」

 と、シズが言いかけたところで、アイがそれを遮った。

「勝負をしましょう!」



「え?」

 シズがポカンを口を開ける。

「いや、これから???を探るんでしょ」

「うん、そうだけど?」

「じゃあ、行こうよ」

「うん、その前に勝負を、と思って」

「えーと……」

 ミミが会話に入ろうとする。

「あ、すみません。アイの癖っていうか。彼女、初めて会う魔法少女と勝負をしたがるんです」

 シズが説明する。

「はあ、そうなんだ」

「どうされますか。アイの要望は放っておいても大丈夫ですよ」

「メイ、どうする?」

 ミミがメイを見る。メイがやや下を向きながら、言う。

「まあ、いいんじゃない」

 あ、ちょっとめんどくさがっているな、これは。だけど、メイがいいって言うんならいいか。

 それにしてもメイに勝負を挑むとは、なかなか勇気があるなぁ。

 シズと戦った時もそうだった。確かに私はメイの心配をしたけれど、メイが負けるなんて夢にも思ってなかった。それくらい、メイは強いのだ。

「あんまり時間がかからないなら、いいかな」

 ミミも応える。

「よっし。じゃあ、決まりですね」

 アイが嬉しそうに小さくガッツポーズをする。



「ミミ先輩、よろしくお願いします!」



「え?」

 ミミは自分の耳を疑った。
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