[長編] 魔法少女は誰かを愛しちゃダメなんですか

Ep. 04 アイノート:リンとの会話編

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リンは、教室のドアから入ってくるアイの姿を認め、手を挙げた。

「おはよー、アイ」

「おーっす、リン」

 アイも同じように手を挙げる。そのまま、自分の机をスルーして、リンの机にやってくる。

「昨日もお疲れ様〜」

 リンが話し出す。

「お、もう知ってるんだ」

「ふふん。私、アイのことなら何でも知ってるよー」

「お、おう。何か怖いな」

「ちょっと引かないでよ」

 昨日、アイが魔法少女として魔物の退治を行ったのだった。リンの労いはこれに対してのものである。



「んでさー」

 リンが話題を変える。

「宿題、でしょ。英語と数学の」

 アイが察して先回りした。

「さっすが!」

「ったく、私のじゃなくてもっと勉強できる人に頼めばいいのに。リンだって、私より成績いいじゃん。何で私なの?」

「こんなの頼めるのアイだけだよー。それに私がアイに勝ってるのは英語と国語くらいだもん」

「はいはい、ほらこれでしょ、お望みのもの」

「わーい。わーい」

 リンは両手を挙げて喜んだ。



「あれ、ここ間違えてない?」

 早速宿題のコピペを始めたリンは、アイの宿題にイチャモンをつけ始めた。

「あ、ここもだ」

「えー、どこどこ」

「ほら、ここ、You loves her. とか、We plays soccer in the park. とか」

 リンはアイの書いた英作文を指し示しながら指摘する。

「え、何が間違いなの?」

「アイってば、動詞の変化苦手だよねー」

「え? え? 何が間違い?」

 アイは、キョトンとした表情のままだ。

「youは二人称でしょ。だから、現在形なら動詞のloveにsはつかない」

「そうなんだっけ?」

「もう、それ中1の内容でしょ」

「それでそれで? こっちの方は?」

「これ、過去形の文章でしょ。だからplaysは間違い。っていうか、主語がweなのにsをつけてるから、二重に間違ってるね、これ」

「ほうほう」

 感心したようにアイは頷いている。

「ほうほう、じゃないよ。よくこれで宿題見せようって気になったね」

「そもそも宿題をやってきていないあんたがそれを言うか」

 アイのチョップが、リンの頭に突き刺さった。



「よし。これで英語おわりーっと」

 リンはグッと伸びをした。

「急がないと朝礼始まるよ」

「わかってるわかってる。数学の方は、答えだけ写すから楽勝だって」

 アイから受け取った数学のプリントを広げる。

「うん、問題数もそんなに多くないし」

「いや、リン……」

「何?」

「それ、証明の問題だから……」

「だから?」

「その文章、全部答え」

「うそ、長っ!」

 リンは愕然とした。数学の問題の答えなんて、2とか4/7とか、-12とかじゃないの?

「だから言ったのに……。まあ、リンは数学の授業寝てるから、知らなかったのかもしれないけど」

「やばいやばい。全然間に合わん」

「ま、頑張ってー」

「うぅ」


 …………
 ……


「アイってさー、極端だよね。得意と不得意」

 給食を食べ終え、昼休みの時間になった途端、リンはアイの机にやってきた。そのまま前の席に座って、話し始める。

「え、そう?」

 またもアイはキョトンとした顔を見せた。

「うん。英語なんて中1レベルからやり直しっ! ってぐらいヤバいのに」

「うっ」

 アイが胸を押さえる。

「数学はイケてるもんなー」

「ふふん」

 アイが胸を張る。

「なんでそうなったの?」

「なんでって言われても……」

 アイは宙を見つめながら答えを模索しているようだ。

「うーん。私、苦手だなって思ったことは、とことん手をつけないタチだからなー」

「あー、わかる」

「リンもどっちかっていうと、私に近いタイプだよね」

「まあ、ね」

「で、ますます苦手になっていっちゃうパターン。英語はまさにそれだね」

「私の数学も似たようなものか……。お互い様ってことで」

「宿題見せてる回数、私の方が多いけどね」

「うっ」

 リンは胸を押さえた。



「シズは、違うよなあ」

 アイがあらぬ方向を見つめながらボソッとつぶやいた。

 リンは耳聡くそのつぶやきをキャッチした。

「シズって、隣のクラスの?」

「そうそう。私と同じ、魔法少女」

「あ、そなんだ」

 リンは興味を失くした。

「どの教科も結構できるもんなー」

「そなんだ」

「魔法だってさ、色々使えるんだよ」

「アイは色々使えないの?」

「うん、これも勉強と同じで、苦手だと一旦思い込んだやつは練習しないんだよね」

「あー、なんかアイっぽい」

「得意な魔法ばっかりだけじゃなく、苦手な魔法も練習しないといけないよなあ、とは思ってるんだけどね……」


 …………
 ……


 放課後になった。

 終礼の後、リンとアイは同じタイミングで教室を出た。

「アイは、今日も部活でしょ?」

 リンがアイのジャージの入った袋を見ながら尋ねる。

「うん。リンは行かないの?」

「私、今日はパスする」

「え、なんで? バスケ部、大会近いんじゃないの?」

「うん、近いのは近いんだけど。ちょっと、ね」

 リンはアイの顔を見ずに答えた。

「ふうん、そっか。じゃ、また明日ね」

「うん、バイバイ」

 リンとアイはお互いに手を振り合って別れた。



 一人帰路についたリンは考えた。

 あー、なんでアイだけなんだろ。

 私も、魔法少女だったら良かったのにな……。
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