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[6分で読める] 予知夢探偵 [短編小説]

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 いつになったら奴は会場に来るのだ……!
 私はイライラしていた。

 パーティー会場には、ターゲット1がすでに来ていた。腹が減っているのか、貧乏性なのか、ガツガツと飯を食べている。時折、他の参加者と談笑しているが、これといって異常はない。こちらに注意を払っている様子もない。
 トリックは万全だった。
 OK。ここまで、計画は予定通り進んでいる。ただ一点を除いて……。

 ただ一点の計算違い。それは、奴、ターゲット2の遅刻だった。
 奴が来なければ、計画が成り立たない。それどころか、来るタイミングによっては、私が死ぬことになる。それだけは断固阻止しなければならない。
 頼む、頼むから早く来てくれ……!

 願いが通じたのだろうか。
 まもなく、ボサボサ頭でTシャツ、ジーパン姿のターゲット2が会場に姿を現した。
 ターゲット2は会場内を見渡し、私の姿を確認すると、こちらに向かって微笑みながら手を挙げた。
 何て服装なんだ。およそこの会場に似つかわしくない。
 しかし、これでターゲット2も現れた。奴は、この後、私の思うように行動してくれるはずだ。
 準備は万端だ。機を見て、計画を実行しようではないか。

 そう考えたその矢先、イレギュラーが発生した。
 ターゲット2がターゲット1に接触したのだ。会話をしながら、仲良く一緒に飯を食っている。
 これは憂慮すべきことか……?
 私は考えた。急に不安になってくる。
 いや、大丈夫だ。ターゲット2の能力について、私は熟知している。この接触で事態が動くことはあり得ない。
 計画通り、焦らず事を進めよう。

 …………
 ……

 この立食パーティーも終わりが近づいてきた。
 コーヒーのセルフサービスコーナーが賑わっている。
 実行の時だ。
 私はそのコーナーに並んだ。ターゲット1も私のすぐ後ろに並んだ。
 よしよし、予想通りだ。
 順番が進み、私の番になった。
 コーヒーメーカーから出てくるコーヒーをカップに注ぎ、砂糖とミルクを入れ、マドラーでかき混ぜる。砂糖の袋やミルクの入れ物、プラスティックのマドラーを設置されているゴミ袋に入れ、その場を去った。
 私に続いて、ターゲット1もコーヒーを入れ始めた。
 思わずほくそ笑んでしまった。計画がうまくいきすぎていて、我ながら怖いものがある。
 しかし、ここからが肝心だ。慎重に事を運ぶ必要がある。

 私は、自分がいたテーブルの近くに戻り、コーヒーを飲もうとカップに口をつけた。
 その時。
「おい、それを飲むな」
 誰かに腕を掴まれた。反動でコーヒーが少しこぼれた。
 ゆっくり振り向く。
「なんだ。誰かと思ったら、君か」
 私の腕を掴んでいたのは、ターゲット2だった。
「危ないところだった。あんた、命拾いしたな」
 ターゲット2は真剣な眼差しで私の目を見ている。
「どういうことだ? 命拾いした、とは?」
「そのコーヒー、毒が入ってるぜ」
「なに!?」
 私は、カップを手放してしまった。カップは床に落ち、カーペットを茶色に染めた。
 私が呆然としていると、ターゲット2はカップを拾った。
「ふう。これであんたの命は救えたわけだな。感謝しろよ」
「何が何だかさっぱりわからない。君、いや、探偵くん、どういうことか説明してくれないか?」
 私に探偵呼ばわりされたターゲット2は、その呼び方に戸惑う様子でもなく、思案顔で私を見ながら、話し始めた。
「そうさな、あんたを……」
 だが、話は途中で中断された。

 女性の叫び声が会場に響き渡ったからだ。

 探偵と私は、叫び声がしたほうを見た。
 誰かが、倒れてうずくまっている。
「まさか……!」
 呟きながら、探偵がその倒れた人物のほうへ駆け出した。
 私も後を追った。

 倒れて動かなくなった人物は、ターゲット1だった。
「なんということだ……!」
 私は呻いた。
 探偵は、しゃがみこんでターゲット1の体を調べていたが、やがて立ち上がり、周りに集まった人たちに向かって首を振った。
 周囲から、驚きと悲しみと不可解な事態に対する疑問の声が上がった。

「〇〇さん、あんた、ちょっといいかい」
 探偵は私の名を呼んだ。
「どなたか、警察に連絡を」
 そう言い残すと、有無を言わせず私を会場の外へと連れ出していった。

「殺人対象が変化したのか、いや……、でも……」
 探偵は下を向いてぶつぶつと呟いた後、やがて私の方を向いて、言った。
「あんたは、今日ここで殺される予定だった。俺にはその未来が見えたんだ」
「君の、あの能力でか」
「知ってるんだな。話が早い。そうだ、俺の予知夢の能力でな」
 探偵はそこで一息つき、再び話し始めた。
「俺は、あんたがコーヒーを飲んで、悶え苦しみやがて死ぬ未来を見た。だから、さっきそれを阻止した。だが……」
「殺されたのは××だった」
「ああ、どうもおかしい。俺の予知夢がはずれたのか? クソっ!」
 探偵は頭を抱え出した。

「くくく」
 私はおかしさに耐えきれずに、思わず笑いをこぼしてしまった。
「ははははは」
「なにが、おかしい……? 人が一人死んだんだぞ!」
 探偵は、怒った表情で私を見た。
「すべては私の計画通りだったのだよ、探偵くん」
「どういう、ことだ?」
「君は私が死ぬ未来を見た。それは、実は間違っていなかったのだ。私のコーヒーには、確かに毒が入っていたのだからな。だが、君は、私が毒入りコーヒーを飲むのを阻止した。その結果、なにが起こったか。あいつの死さ!」
「お前、まさか……!」
「君の思っている通りだよ。私は自分の命を、君の正義の心に賭けた。賭けは私の勝ちのようだったがね。とにかく、君が私の自殺を阻止することによって、あいつのコーヒーに毒が入るようにトリックを仕込んだのだ。他でもない君が、あいつを殺したんだよ」
「俺の能力が、殺人に利用された……?」
「悔しいか? 探偵くん。まあ、君に恨みはないが、このパーティーにあいつと君が参加すると知ってね、それでこんな計画を立ててみたわけだよ。どうだい、うまく出来ているだろう?」
 私の勝利宣言に、探偵は俯き、肩を震わせた。

「あははははっ」
 突然、探偵が笑い出した。
「探偵くんよ、気でも狂ったか?」
「いやいや、俺の予知夢もここまでとは。我ながら大した能力だと思ってね。あんたの計画は知っていた。だから、あいつに一芝居打ってもらったのさ。今頃、ピンピンして、警察が来て、あんたを捕まえるのを待っているだろうよ」
「そんな、それはおかしい! 君は、私の死を予知したはずだぞ」
「そうだ。俺は確かに、あんたの死ぬ未来を見た、一回目はな」
 私はハッと気付いた。
「まさか……、このパーティーに遅れたのは……!」
「そう、俺の寝坊が原因さ。いやあ、うっかり二度寝しちまったよ。あんたの命がかかっているというのにな。まあ、おかげで誰の命も失わせずに済んだわけだが」
 2度目の夢で、探偵は私を救うべく行動したのだという。すると、あいつが、ターゲット1が殺されてしまった。それで私の計画に気づいたらしい。
「ありがとな、これからは重要な事件が起こる日にゃ、必ず二度寝することにするよ」
 探偵が私の肩をポンと叩いた。
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