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[中編] 禁忌の呪文、魂の行方

[中編] 禁忌の呪文、魂の行方( 2 of 13 )

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 翌日、ヒコサは普段よりも遅れてやってきた。手には分厚い本を持っている。
「ごめん。ちょっと調べものしていたら遅れちゃったよ」
 その姿を認めたネロウは、こう宣言した。
「んじゃあ、ジャドとミリサとエルドのちびたちは基地づくりね。使えそうな材料集めてきて。俺とヒコサとパレットで石板の調査をするから」
「はーい」
「はーい」
 ジャドとミリサが勢いよく手を上げた。エルドは黙ってうなずき、さっさと材料探しに行ってしまい、ジャドとミリサは慌ててついて行った。
「それでそれで、結局昨日、何か分かったの?」
 パレットが残った二人に尋ねる。
「いやあ、それがさあ、」
「ああ、文字がなんなのかだけはわかったよ」
 ネロウの言葉にヒコサが重ねて言った。面白くないな、とネロウは思った。ちょっと不機嫌になる。
「なんだったの?」
 パレットの目が輝いている気がする。その視線が向けられているのはヒコサだ。
「どうもパピル文字らしいんだ」
「パピル? 聞いたことない」
「うん。ここらへんじゃ見られないからね。東の国の昔の言葉らしいよ」
 ネロウたちの住む村から東に行くと、まず大国である騎士の国ガザールにぶつかる。さらに進むとそのガザールと敵対している魔法国家プリスタがある。ヒコサの言う東の国とは、このプリスタのことを指す。ガザールは通常(ここから見れば東であるが)西の国と呼ばれる。
「へえ。なんで東の国の石板がここにあるんだろう?」
 パレットが首をかしげる。
「ああ、それは俺も思った。そもそもなんで石板がこんな森にあるんだろうって」
 ネロウもパレットに同調した。
「残念だけど、それはわからなかったよ。東の国の遺跡で見つかるならともかくとして、パピルは今じゃプリスタでも使われていない文字だからね。なんで遠く離れたこの地にそんな遺物が残っているのか。これは難しい問題なんじゃないかな。と、まあ、それはおいといて」
 ヒコサは持ってきていたボロボロの本を取り出し、ぺらぺらとめくりだした。
「この本には、パピル文字を僕らの言語に翻訳する方法が書いてあるんだ。なぜか知らないけど、父さんが持っていたよ。古い物好きだから、お眼鏡に叶ったのかもしれない。東から来た商人から買ったって言っていたよ」
 なるほど、確かにヒコサの本には、石板に書かれているようなミミズ文字と幾何学模様の両方が載っていた。林の暗さで陰ってやや読みにくいが、その下にはネロウでもわかる共通言語が書かれている。
「じゃあ、この石板の内容を読むためには、その本を調べながら翻訳していけばいいってことになるのね?」
 パレットがヒコサから本を受け取った。うわ重っ、とつぶやく。
「そうなるね。どれくらい時間がかかるかわからないけれど、いちいち単語を置き換えていけば確実に読めるようになると思う。ただ、」
 ヒコサが腕を組み、心持低い声でこう続けた。
「魔法に関する石板であることはどうも確からしい。さっきも言ったけど、魔法国家プリスタの遺物だからね。十分に用心しないと、憑かれるかもしれない」
 パレットとヒコサは黙りこくった。その魔法とやらの効力と恐ろしさについて知っているのかのようだ。ネロウは魔法についての知識が欠けているため、なぜ二人がそんなに真剣な表情になったのか、いまいち理解できなかった。ただ好奇心だけがネロウの中でむくむくと膨らんでいた。さっきまでヒコサに嫉妬していたのを忘れたかのように。
「いいからさっさと読み進めようぜ。危なくなったらやめればいいんだろ?」
 若干怖い顔を残したまま、ヒコサはネロウの意見にうなずき、同意した。
「ただし、危険を感じたら即座にやめるんだよ。それから、エルド、ジャド、ミリサにはこのことは秘密にしておくこと。僕が適当に誤魔化しておくから、あの子らの前では石板について話さないようにね」
「わかったわ」
 パレットがうなずき、ネロウもそれに追従した。

 結局、その日は、本を読んでパピル語を読み進めるための方法を学び、互いに議論しただけで終わってしまった。単語を一対一に対応させていけば読めるだろう、と思っていたネロウたちだったが、どうやら文法自体が共通語とは異なっているらしい。
 これは案外きつい作業になるかもしれないな、とネロウは思った。
 石板に書かれている文字は、本にすると4ページ分くらいはあった。見知らぬ言語で書かれた4ページはかなりヘビーである。しかし、
「へえ、パピル語って面白いわね。なんで動詞を後ろに持ってくるのかしら? ねえ、見て見て、ここ。変な言葉。ワンワンチャンだって。犬っぽいけど、意味は猫みたい。おかしいわ」
 パレットがはまってしまった。放っておけば、彼女だけでも石板を読み進めるだろう。こうなってはネロウが引き下がるわけにはいかない。学校の成績も芳しくなく、頭が悪い、と自分では思っているが、これは必死こいて勉強しなければならないようだ。
 一方で、パレットに例の本を貸したヒコサは、まあ勝手にするといいよ、とやや呆れ気味だった。ヒコサは勉強が得意な方であるはずだが、謎の石板にはあまり興味がないらしい。
 お、これはチャンス到来か? 明日からパレットと勉強会だ!
 ネロウのテンションは上がり調子だ。
 気づかぬうちに、日は暮れていた。材料集めをさぼって木の枝でチャンバラごっこをしていたエルドとジャド、それを横目に草と枝で小物を作っていたミリサを家に送り帰したネロウたちは、それぞれの家路についていた。
 今にも雨が降りそうな暗雲が立ち込めていたが、ネロウは気にせず、少し浮かれた様子で、ステップでリズムを刻みながら帰って行ったのだった。

「汝、憑代をヒトカタにせんとするものなりや」
 パレットとネロウが石板にかかりきりになってしまったため、基地づくりはヒコサのリーダーシップのもと進められることになっていた。ふとネロウが上の方を見上げると、着々とその製作は進められているようだった。すでにちょっと前までは板しかなかった基地に立派な屋根が半分ほどできていた。
「ヒトカタっていうのが何なのかわからないわね。特別な用語なのかしら?」
 ぶつぶつとつぶやきながら、解読に夢中になっているパレットの横で、ネロウは上の空だった。パレットがずんずんパピル語に対する理解を深めていく一方で、ネロウの勉強はちっとも進んでいなかったのだ。
 ちんぷんかんぷんだな。やっぱり俺には頭使うのは向いてないや、とネロウは思った。
「うーん、難しい単語が出てきたわ。ネロウはどう思う?」
「え? あ、ああ。そうだね。難しいよね」
 うむ。パレットの近くにいられるだけでよしとしよう。
 ジャドとミリサが時折、石板の解読に興味を持ったように近づいてくる。じいっとパレットとネロウの様子を見つめてくるのだ。そのたびにネロウはアレコレ理由をつけて追い返していたが、ここでピンと案が浮かんだ。
 俺でもパレットの役に立てるかもしれない。
「なあ、ジャド、ミリサ。ちょっと石板が置いてあった場所に連れて行ってくれないか。もしかしたら、そこに何か石板解読のヒントが隠されているかもしれないから」
「ねえ、石板って何が書いてあるの?」
「私も知りたい。石板の秘密って何?」
 おっとここはうまくごまかさないといけないな。
「石板について、ヒコサは何て言ってた?」
 首をかしげ、ジャドとミリサはほとんど同時に答えた。
「なんかねー、古いお話が書いてあるって」
「王子さまとお姫様が出てくるおとぎ話だって」
「そうかそうか。俺たちは今その物語を読んでるんだ。全部読み終わったら、お前たちにも教えてやるからな」
「うん」
「絶対だよー」
 よしよしと二人の頭を撫でて、石板がかつて置いてあった場所へと案内させた。

 そこは開けた場所だった。周囲に草や木が生えていない空間。直径10メートルほどだろうか。日の光が露出した土によく当たっていた。
「ここ」
「ここ」
 ジャドとミリサがその円形の広場の中央を指し示した。そこに寄ってみてみると、ほとんど消えかかってしまってはいるが、何か文字が円を描くように書かれている。白い粉で書かれていたため、雨やなんかで流されてしまったのだろう。
 果たしてこれは、パピル文字だろうか。少し文字のタイプが違って見えるが……。
「ここにパタンて倒れてあったのか?」
 文字の円の中心を指して問いかける。
 二人は、うんとうなずいた。
 うーん、消えて読めない部分が多々あるし、それに消えてなかったとしてもこの文字は知らないなあ。何かありそうではあるけれど、それがなんなのかはわからないな。
 まあ、いいや。仕方ない。一応パレットに報告だけしてみよう。もしかしたらもうパレット自身、この文字について知っているかもしれないけど。
 薄暗い林の中へと戻っていく。基地への帰り道は、ネロウがジャドとミリサを先導した。ネロウの頭には、報告に対するパレットの反応がカタログのごとく並んで浮かび上がっていた。
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