[長編] 魔法少女は誰かを愛しちゃダメなんですか

第23話 一時の別れ

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「マリちゃんやるじゃん!」

「ナイスアシスト!」

「い、いやあ。あはは」

 なぜか敵チームであった双子に褒められ、マリは頭を掻いている。

 ここは、公園の一角にあるあずまやである。両チームとミミ、メイが各々の場所に座っている。

「マリちゃんが突然ボールを生成して、ポーンって飛ばすだもん。えっどこ狙ってんのって思って振り向いたら、アイが飛び上がっててさ」

 とルイ。

「アイが後ろ向いて飛び上がったなあ、と思ったら、いつの間にかボールが来ててさ、そのまま一回転してシュートだものね。あれはびっくりしたよ」

 とイル。

「ア、アイさんがすごかっただけですよ……」

「謙遜しなくていいよ、マリ。ナイスだった。グッジョブ!」

 会話が聞こえたのか、アイが親指を立ててマリを褒めた。マリはまた、頭を掻いていた。



「それにしても、ライ先輩はなぜマリの奇襲に気づかれたんですか?」

 アイがライに尋ねる。勝負中のあのビープ音は、マリの奇襲に対する、双子への警告であった。

「ああ、誰が来るのかはわかんなかったけど……。アイが煙幕使ったのにあたしに対して攻撃を仕掛けてこなかったこと、煙幕の効果範囲が場内の中央のみだったこと、それから西チームの自陣が、黒い壁によって見渡せず、相手の姿が確認できなかったこと。これらのことから、何かこちらに見せたくないものがあるんだな、と感じた。だから、奇襲が来る、とまでは思わなかったけど、イル&ルイに警告出しておいて正解だったみたいだね」

「はー、そこまで考えたんですね。私だったら絶対見過ごしてました……」

「ちなみに、あの作戦は誰の発案なの?」

「それは……」

 アイは隣に座っていたシズを引っ張ってくる。

「シズちゃんです!」

「だから、ちゃん付けは」

「へえ。シズ、透明化の性質変化って難しいんじゃないの?かなりレベル高いって聞いたことがあるけど」

 シズがライの問いかけに頷く。

「はい。師匠に直接教えてもらいました。まだまだ師匠のようにはいきませんし、生物相手だともっと難易度が上がるので、うまくいくかどうかわかりませんでしたが」

「あの半透明の壁も上手かったね」

「ありがとうございます。あれは保険でしたけど、結果的に救われました」



「ライは、どうやってあのシズの壁を壊してたの?ただ殴ってただけのように見えたんだけど……」

 ミミが気になって、ライに尋ねた。

「ああ、それはね。これさ」

 ライはグローブを取り出した。

「あ、そういえば手にはめられてました」

 シズが思い出したように言った。ライがグローブを手につけながら説明する。

「これをはめて、性質変化・硬質化と重量化をかけた。これでただ殴るだけでも、相当の威力が出るよ。でも、これとあたしの力だけじゃあ足りないから、テレキネシスで自分のパンチを加速させた。結構な破壊力でしょ」

「私、びっくりしました」

「そんな使い方があるんですね」

「へええ」

 シズ、アイ、ミミが各々反応する。

「まあ、体にちょっと負担がかかる技なんだけどね」



 ミミは、ライの話を聞いて、これなら魔力の消費量も少ないし、自分にもできるのではないかと、一瞬考えた。しかし、ライのような身のこなしとパンチ力を身につけてはいない自分には、この技はかなり厳しいな、と思い始めた。なにより、これを使うには相手に接近する必要がある。私なら、接近した時点でテレキネシスを使っちゃうだろうな。何はともあれ、やっぱり体力作りは必要なんだな。よし、私も部活頑張ろう!

 ミミの考察が結論に達していると、アイが別の質問を始めた。

「ちょっと話が変わるんですけど、ライ先輩って西から来られたんですよね」

「そうだよ」

「じゃあ、西にも魔法少女の知り合いっているんですか?」

「あー、うー、そーだねー」

 なぜか、ライの歯切れが悪くなった。何かまずい質問をしたのかな、とアイは気にし始めたようである。

「えーっと。西から東へ来る直前くらいに、私は魔法少女になったから、あんまり西の魔法少女事情については詳しくないんだけど……、1人だけ知ってる奴がいる」

「お聞きしても……?」

 アイが恐る恐る尋ねた。

「……OK」

 何か、今までと打って変わって、テンションが低い。何があったのだろうか。



「サキっていう、あたしの幼馴染がいてね。そいつが、魔法少女だった。あたしよりも1年くらい前から魔法少女やってたらしいよ」

「サキ先輩ですか、私知ってます!」

「あ、そう」

 ライの返事はそっけない。

「……苦手なんだよね、サキ」

「そうなんですか?」

「うん、何ていうか、あいつ怖いんだよ。冷たいしさ」

 そう、ライがため息まじりに告白していると、

「サキさんは優しいですよ!」

 マリの大きな声が響いた。



「え、マリはサキ先輩のこと知ってるんだ」

 アイがマリに訊く。

「はい。これまでも私のこと、何度も助けてくれました!」

「へー、あいつがねー」

 ライは相変わらず気の無い返事をしている。

「そうです!私、サキさん好きです。尊敬してます!」

 マリが意気込んで言う。

 それに対するライの反応は非常に薄かった。なんとなく微妙な空気を作ってしまったことに責任を感じたのだろうか、アイは無理やり話を終わらせにかかった。

「さ、さあ、反省会もそろそろ終わりかな。シズ、今何時?」

 メイはこの間、一言も言葉を発しなかった。



「じゃあ、あたしと双子はこれでオサラバするよ!勝負、楽しかったよ!ミミの依頼の件は安心して!」

 一時の別れの時がきた。

 反省会が終わり、一気にテンションを取り戻したライが手を振った。イル&ルイも同じく手を振る。

「またね、みんな!ミミ、安心しろよー!」

「また会う日までー!ミミの町も私たちが守るからね!」

 双子も別れの挨拶を述べた後、去っていった。

「だいぶ、賑やかな方たちでしたね」

 シズが感想を述べた。

「うん。でも、頼りになると思う」

 ミミが応える。

「それじゃ、私たちも、帰りますか」

 アイがシズとマリに言う。

「またいつでも遊びに来てくださいね」

 シズがミミとメイに言い、マリは頷いた。

「何だか、一気に寂しくなるなー。ね、メイ?」

 とミミはメイのほうを向いたが、

「いや、私も西に行くから」

 というメイの答えに愕然とした。そうだった。メイも西で魔法少女として魔物と戦うんだった。というか、そのためにライやイル&ルイにお手伝いを頼んだんじゃないか!なんで忘れてたんだ!このバカ!私のバカ!

 ミミが脳内で自分を殴っていると、

「……寂しい?」

 とメイがミミに訊いてきた。ミミは、このメイの気遣いに感極まった。

「寂しいよおー、メイー!」

 思わずメイに抱きつこうとしたが、あっさり避けられた。

「日曜日の夜には、一旦帰ってくるから」

 メイはそう言い残し、去っていった。ミミはしょんぼりした。ミミとメイの様子を眺めていたシズとアイも、

「そ、それでは、しばしの間お別れを」

「じゃ、じゃあ、ミミさん、またお会いしましょう」

 一礼をして去っていった。

「私も、帰りますね。お世話になりました!本当にありがとうございました!」

 マリもミミにお辞儀をして、シズやアイのあとを追っていった。



 残されたミミは、1人ため息をつきながら、帰途についた。
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