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掌編・短編小説

[6分で読める] 夢見る(オカルト)研究者 [短編小説]

 ←一発ネタの短編小説をいくら書いても、筆力向上には寄与しないのではないか? →小説における意図ってなんざんしょ? それって必要なものでゲスか?
 ニコニコ顔の矢崎がノックもせずにドアから入ってきたのを見て、中山教授はげんなりした。――また彼の悪い癖が出てしまったようだ。これさえなければ文句なしの優秀な研究者になれるだろうに……。

「せんせー、お暇ですよね。新説を思いついたので、ぜひ聞いてくださいよ!」

 矢崎のオカルト趣味が一度暴走し始めたならば、止める術はただ一つ。冷静に一つ一つ反論してやることだ。矢崎は決してバカじゃない。丁寧に対応してやれば、最後には折れてくれる。

「わかった、聞こうじゃないか。今度はどんな突飛なアイディアが浮かんだのかね?」

「先生も驚かれると思いますよ! なんたって今度は……、いえ、順序立ててお話しましょうか」

 矢崎は持参してきたパイプ椅子に腰かけると、笑顔はそのまま、紙の資料を中山教授の机の上に並べ始めた。



「では、これまでに判明している事柄をまず提示することにしましょう。

 一つ、昨今、日本のある地方でミイラ化した死体(のちにRvWと名付けられる)が発見されました。ミイラ・RvWは丁重に保存されており、状態は良好。10代後半から20代前半の男性であるようです。年代測定によれば、このRvWが生きていたのは5世紀のことであると推測されています。ただし、当時の日本には、これほどきれいなミイラを作る技術はなかったとされています。

 二つ、ミイラの発見場所のすぐ近傍で、これまたきれいな保存状態の木製の箱が発見されました。年代測定によれば、やはり5世紀に造られたものであることがわかっています。ただし、この箱の奇妙な点は、当時の日本には見られない模様、細工が施されていることです。このような装飾を施す技術が存在したことを示す証拠は今のところ報告されていません」

 早口でまくしたてる矢崎の声を聴きながら、中山教授は事実関係を一つ一つ確認していた。――うむ、まあ、ここまでは既知の事柄だな。時代背景に合わないミイラおよび木製の箱は目下のところ、研究者たちを悩ませている。

「続けたまえ」



「はい。以上の2点からミイラと木の箱には密接な関係があると考えられますが、もう一つこれらを結びつけるものが見つかっています。

 三つ、ミイラおよび箱の各々の史料に、ある粉末状の物質が微量に付着していたことが判明しました。その物質は通常、火山灰などに含まれており、非常に強い吸湿性を示すものであることがわかっています。しかし、その物質の起源は特定できていません。というのも、その当時の活火山の活動を記した文献に限りがあり、また、成分分析から得られた物質の組成と一致する現存する火山が見つかっていないためです。一部の研究者は、この物質が日本の火山由来であることを疑問視しています。
 
 さて、この三つ目の事柄と関連のありそうな事実をいまひとつ示しておきます。

 四つ、5世紀の日本といえば、大飢饉が発生したことで有名です。この飢饉の原因は局地的な寒冷化であることが様々な研究者たちから推察されています。しかし、その寒冷化の直接的な原因は判明していません。

 以上、ここまでが基礎的な事実の確認です。この先の推論を進めてもよろしいでしょうか」

 中山教授は考えた。――粉末状物質の情報は初耳だが、矢崎くんが言う以上、事実なのだろう。しかし、四つ目の飢饉や寒冷化の情報だけが異質だ。これがどう結びついてくるというのだろう。……まあ、先に矢崎くん本人の考えを聞こうか。

「よろしい。推論に移りたまえ」



「それでは、推論に参りたいと思います。一つ目および二つ目の事実から、件のミイラおよび箱は当時の日本の技術で作られたものではないことが推測されます。さらに言えば、かつての日本とは別の文明、文化が存在していることが示唆されます。ただし、それが諸外国でないことはすでにわかっています」

 ――おっと、いきなり論理が飛躍したようだな。ここは後でツッコミを入れるとしよう。

「三つ目および四つ目の事実から、5世紀に起こった寒冷化の原因物質が、ミイラおよび箱に付着していた物質であると予想することができます。日傘効果というものをご存知でしょうか。大規模な火山活動が発生すると、日射量を減少させる火山性エアロゾルが成層圏まで広がり、寒冷化を引き起こす、というものです。有名なのは18世紀のアイスランドのラキ山の噴火ですね。ヨーロッパのみならず、日本でも『天明の大飢饉』を発生させたとも言われています。つまり、火山由来ではないと推察されている件の粉末状物質は、もともと件の箱に入っていたものであり、それを開封したと同時にガスとともに一斉に広がり、空を覆ったのです。またその開封者はもろにその物質に体を暴露してしまい、脱水症状を引き起こすと同時に死に至り、ミイラ化してしまった、と考えられるのです」

 ――筋だけは相変わらず通っているな。しかし、根拠が足りん。

「さらに、推論を進めると次のような驚くべき事実が浮かび上がってきます。ここからですよ、せんせー!」

 矢崎の鼻息が荒くなる。

「先に述べたとおり、ミイラ化してしまった人物(RvW)の死は、直接的には木の箱に含まれていた物質に由来するものです。ところで、もしRvWが死ぬ様子を目撃した人がいれば、その目撃者にはRvWの干からびていく様子はどう見えたでしょう。その様子を見て、『極短時間の間に年老いていった』とかの人物は錯覚した、と考えることはできないでしょうか。干からびていく過程と年老いる過程は、多くの点において似ていますからね」

 ――似ているというのは、外見上、肌や体毛に起こる変化のことを言っているのだろう。

「つまり、ミイラ化し発見されたRvWこそが浦島太郎その人であり、件の木の箱こそが玉手箱であったのではないか、と推測するのは、果たして無理な想像でしょうか?」

 中山教授は椅子からずり落ちた。



 侃侃諤諤の議論の末、ついに矢崎は自説を撤回することにしたようだ。――無理もあるまい。推論は立派だが、なにせ根拠が足りないのだからな。

「さて、どうかね、ここらで一杯コーヒーでも飲むかね?」

「はい。いただきます……」

 意気消沈した様子だが、一日も経てばすぐに回復するだろう。



「うん、今回もおいしく淹れることができたな」

 満足げにうなずく中山教授。矢崎くんはその間、スマホでメールチェックをしていた。見ると、なにやら手が震えている。

「せ、せんせー。こんなメールが届きました。読みます。『矢崎君、一刻もはやく君に伝えねばなるまいと思って連絡差し上げる。件のミイラが発掘された場所だが、もう一つ別のミイラが発見されたようだ。なんでも、ウミガメのものらしい』」

 中山教授の手から、コーヒーが流れ落ちていった。

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